CASE STUDY

BMI、Toolkit3D、Extolを繋ぐことで、マスパーソナライズされたO&P医療製品生産を可能にするCO-AMプラットフォーム

5 分で読めます

Berretta Medical Inc.の3Dプリントによるカスタムブレース。

医療機器のように患者データを利用し、大規模なパーソナライゼーションの導入を検討している業界では、接続性と正確性がサプライチェーンを円滑に運営するための重要な要素となります。業務自動化により、手作業や反復作業を簡素化、不必要なコミュニケーションを減らし、ヒューマンエラーを防ぐことができるため、サプライチェーンのデジタル化は不可欠となってきています。

Materialise CO-AM は、サプライチェーンのさまざまな関連業者を、安全で統一された1つのプラットフォームでシームレスに繋ぎます。BMI、Toolkit3D、Extolがその一例です。CO-AMは、カスタム3Dプリントの膝関節装具を製造するために、デジタルでつながったスレッドを形成し、時間と資源の節約に貢献しました。

BMI社の3Dプリンターによる歯列製作のワークフローを示す図。

1) 患者のデータをスキャンし、3Dプリントで装具をデザインする

BMI社、Toolkit3Dを活用した3Dモデリングを採用

Berretta Medical Inc. 社は、整形外科・義肢装具(O&P)業界向けの製品を製造・販売する企業です。BMI社の主力製品のひとつがオーダーメイドの装具で、従来はフライス加工と成型加工で製造されていました。しかし、この装具の製作は、複雑で職人技が必要なため、時間がかかります。さらに、COVID-19、労働力不足、コストの上昇といったマクロ的な要因もあり、BMI社は3Dプリンターの導入に踏み切りました。

「私たちは5人ほどの小さなチームで、年間約2,000個の装具を生産しています。成形の工程があるため、1人の人間が装具を作るのに丸1日かかることもあります。そこで、3Dプリンターとデジタル化により、生産を加速させ、こうした課題を解決することにしました。導入後は、管理やコントロールもしやすくなりました」と、BMI社のビジネスデベロップメントリード兼オーナーのNick Berretta氏は話します。

Berretta Medical Inc.の3Dプリントによるカスタムブレースを装着してトレッドミルでランニングする男性。
Toolkit3Dでのスキャン処理からパーツフィッティングまでのワークフロー。

3Dプリントされたオーダーメイドの装具と、Scan Processing(スキャン処理)からPart Fitting(パーツ装着)までのワークフロー             Credit:Berretta Medical Inc.、Toolkit3D

BMI社は3Dプリントの経験が浅いため、3Dモデリングとカスタマイズに特化したオンライン・ソフトウェア・プラットフォームであるToolkit3Dに協力を依頼しました。Toolkit3Dのリード・メカニカル・スペシャリストであるSean-Philippe Viens氏は、次のように述べています。「患者をスキャンした後、BMI社の熟練技師が、患者の脚の画像を参考に、装具を一から物理的なパーツに成形する必要がありました。当社のデザインエンジンを使用することで、BMI社は3Dで簡単にデザインを生成し、カスタマイズできるようになりました。」

Toolkit3Dのデザインエンジン(Shapeshift 3D社)を使用することで、BMI社はより分かりやすく、柔軟なデザインアプローチを採用することができました。しかし、BMI社では、患者のスキャンデータ、患者の記録と製品パラメータのシステムへの入力、デザインの生成、カスタマイズされた装具の製造という、装具を出荷するまでに4つの異なるプロセスを経る必要がありました。これらの工程はデジタル化され、ある程度自動化されていましたが、それぞれのワークフローはサイロ化されていたのです。そのため、製造のワークフローが複雑化し、ヒューマンエラーの可能性も高まっていました。

「私たちは3Dプリンターの世界ではまだ経験が浅いです。しかし、アディティブマニュファクチャリング(AM)とデジタルワークフローは実用的で、経済的にも私たちにとって理想的なものであると理解していました。私たちには、リスクを最小限に抑え、設計や管理段階での時間を節約でき、従業員が使いやすいソリューションが必要でした。そこで、Toolkit3Dのツールを選択しました。Toolkit3Dは、これらすべてを可能にし、CO-AMプラットフォームをにより、更にサプライヤーと繋がることを実現しました。今では、1つのソリューションを使うだけでよく、シンプルになり、コスト面でも効果が出ています」とNick氏は評価しています。

2)デザインとサプライヤーを安全な1つのプラットフォームで繋ぐ

Toolkit3DのAPI、Extol社採用のCO-AMプラットフォームとシームレスに繋がる

今回のコラボレーションは、BMI社とToolkit3Dの初めての共同作業でしたが、Toolkit3Dは3Dプリントに精通していない他の企業との共同作業の経験を持っていました。

「O&P業界における3Dプリントに対する知識水準は低く、ほとんどの企業は、ほとんど、あるいはまったく経験がないことが現状です。3Dプリントを少し試したことのある企業は、スケールアップを可能にする重要な要素が欠けているため、3Dプリント導入は不可能だと結論付けていました。当社のToolkit APIソリューションは、BMI社の3Dプリント装具の認定サプライヤーである Extol社が使用するデジタル・サプライ・チェーン・プラットフォームであるCO-AMと繋がっています。1つのプラットフォームがこれらすべてをつなぐことで、本来の価値が生まれるのです。」とSean-Philippe氏は話します。

HP MJFプリンターを採用したExtolのDigital Development Center™。
HP Multi Jet Fusionプリンターを採用したExtol社のDigital Development Center™  Credit:Extol社

製品カタログの分析、スキャンデータの検証、Extol社への発注処理など、後工程をToolkit3Dと装具専用のデザインエンジンで処理することは、BMI社にとって画期的なことです。「1つのプラットフォームで作業を行うことで、パーツコストを5~10%削減することができ、負担が軽減されました。また、装具の設計にかかる時間も20~30分で済むようになりました」と、Nick氏は語ります。

Toolkit3DのAPIは、Extol社が使用するCO-AMプラットフォームとシームレスに連携しています。Toolkit3Dの場合は、クライアントがソフトウェアを使用する際の操作性を最適化し、デザインをサプライヤーに転送する方法で生産を実現しています。

Extolのアプリケーションエンジニアが、3Dプリントの粉から特注の装具を取り外す様子。
Extol社のアプリケーションエンジニアが、オーダーメイド装具の粉末を除去する様子  Credit:Extol社

「CO-AMとの統合は短期間で行われ、APIの実装に数日を費やしただけでした。CO-AMは、Toolkit3DとExtol社の統合と効率化に必要な役割を果たすものでした」とSean-Philippe氏は述べています。Toolkit3DのCCOであるEdward Ponomarev氏は、「CO-AMはBMI社にとって、自社の製造実行システム(MES)の必要がなくなり、Extol社はコンプライアンスに準拠した自動化・暗号化データを受け取ることができるというメリットがあります」と付け加えています。「Toolkit3DとCO-AMを組み合わせることで、BMI社やExtol社のような企業は、ワークフローを通じたデータ送信に必要な手作業を最大75%削減することができます」。

3) カスタム装具の加工・製造・出荷

Extol社、CO-AMの活用でToolkit3Dからのリクエストの効率化を実現

Extol社は、3Dプリント医療機器の受託製造において業界をリードする企業であり、BMI社の信頼できるサプライヤーです。しかし、同社はToolkit3Dとも長年の付き合いがあります。Extol社のビジネスユニットマネージャーであるKyle Harvey氏は、次のように述べています。「私たちは、パンデミックの際にマスクを3Dプリントすることから一緒に仕事を始め、以来、関係を深めてきました。当社はToolkit3Dと、カスタマイズされた製品の生産拡大のために、完全に接続されたデジタルプロセスを構築するという共通のビジョンを持っており、CO-AMは当社が必要としていた架け橋となっています。」

CO-AMのAPIは、工場、オペレーション、製造、販売システムなど、異なるシステムを1つのプラットフォームで接続させます。このような取り組みは、 医療機器市場におけるマス・パーソナライゼーション にも広く影響を与える可能性があります。CO-AMが他社のアプリケーションと連携することで、コストを削減し、カスタマイズされたデバイスの普及率を高めることを可能にします。

「O&P市場におけるマスパーソナライゼーションの普及を加速させる最も効果的な方法は、コストを削減することです。また、三脚椅子の3本目の足とも言える、技術的な実現可能性とユーザーにとっての有用性が証明されました」とKyle氏は言います。「ビジネスとして成り立つかどうかは、次の課題です。手作業でデータを転送し、オーダーを入力、何千もの異なるデータを追跡するには労力を要します。また、それを大規模に行うのはコスト的に困難です。CO-AMとそのAPIは、さまざまな自動化の領域を結びつけ、エンドツーエンドのデジタルプロセスを可能にします。これは、ビジネスの可能性を提供するシンプルなソリューションであるため、個々の患者に特化した医療機器製造を拡大するための重要な鍵となります。」

机の前に座って、ソフトウェアを使用している女性
CO-AMはワークフローを合理化し、BMI、Toolkit3D、Extolを1つの安全なプラットフォームで接続します。

BMI社とExtol社は、マスパーソナライゼーションを実現するオートメーション技術をいち早く採用した企業ですが、ビジネスの可能性がより明確になれば、さらに多くの企業や業界がこのトレンドを取り入れていくかもしれません。「事実上カスタマイズ製品を生産するあらゆる産業がその恩恵を受けることになります。 」と、Edward氏は述べています。ウェアラブルデバイス(装備型のコンピューターデバイス)、防護具、家具、スポーツ用品などのアプリケーションがこれに該当します。

複数のソリューションを1つのプラットフォームで

CO-AMによる安全なエンドツーエンドのデジタルサプライチェーンの構築

結果、3社すべてのニーズを満たすソリューションが完成しました。BMI社は、何千ものデータを扱いながら、モデルを素早く作成し、材料の無駄を省き、ヒューマンエラーの可能性を最小化することができます。Toolkit3Dは、多くのサイロ化したプロセスを合理化し、主要な3Dプリントサプライヤーにつながることが可能なため、3Dプリントを導入しようとする経験の浅い企業にとって、さらに魅力的な選択肢となりました。そしてExtol社は、顧客と提携して大規模なマスパーソナライズ製品を製造することで、新しいビジネスモデルを展開することができます。

CO-AMは、異なるプラットフォームを統合することでワークフローを簡素化し、スキャンから造形までの完全なデジタルサプライチェーンを可能にします。これにより、カスタマイズされた医療機器とそれを使用する患者との距離を縮めたいと考えている O&P 業界にとって、大きな効果が期待できます。


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上記CASE STUDYについて

業界

形外科製品・義肢装具

ソリューション

Materialise CO-AM Software Platform

アプローチ
  • コミュニケーションとマニュアルのプロセスを1つの安全なプラットフォームで管理することが可能
  • サプライチェーンにデジタルスレッドを提供
  • CO-AMプラットフォームに様々なAPIを統合して、簡単にご利用いただくことが可能

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