課題

トポロジー最適化後の複雑な構造を含むブラケットを、チタンで3Dプリント生産すること

解決法

アルテア、マテリアライズ、レニショー3社の強みを活かしたコラボレーション

手法

粗いデータの調整、最適化されたサポート構造の作成、スライス技術の適用

業界

工業製品

自然界の有機構造を活かして

特徴的な曲線を持つこのスパイダーブラケット。ユニークな設計は、アルテアのトポロジー最適化ソフトウェアで実現したもの。自然界に見られる有機的構造をまね、軽量かつ強靭な有機構造、さらに安定性と熱挙動を最適化する格子構造を組み合わせた独特のデザインができあがりました。ただしトポロジー最適化後の3Dデータは粗くなりがち。それを問題なく3Dプリントするには、十分なスムージング(データ表面をなめらかに処理する)工程が必要になります。

格子構造を含んだソリッドメッシュ

格子構造を含んだソリッドメッシュ

 トポロジー最適化の結果ソリッド領域と格子構造が共存する形になったこのスパイダーブラケットの場合、スムージング作業は通常以上に困難なものとなりました。ソリッド部分と格子部分が混ざり合った不規則な境界線は3Dプリントが難しいだけでなく、応力集中につながることもあります。

今回トポロジー最適化後のデータ処理に活用されたのは、3Dプリント用設計最適化ソフトウェア「Materialise 3-matic」。3-maticを用いればトポロジー最適化後の粗いデータを滑らかに整える作業をSTLファイル上で直接行えるため、ファイル形式の変換やCADでの操作といった工程を省くことができます。

トポロジー最適化後の粗いデータ

トポロジー最適化後の粗いデータ

Materialise 3-matic で表面を整えたデータ

Materialise 3-matic で表面を整えたデータ

不規則な形状に加え、3Dプリント中に格子構造を支えるサポート材にも注意が必要です。例えばサポート材が最適な設計でない場合、造形後にサポート材を取り除く際に格子構造が壊れてしまうことも。

こうしたリスクを防ぐため、データ準備を担当したエンジニアはサポート材が付く格子構造の下に薄いソリッドの層を追加。その他の領域では極力少ないサポート材で金属3Dプリントができるよう、設計改善が行われました。

サポート材が付く格子構造の下に薄いソリッドの層を追加

サポート材が付く格子構造の下に薄いソリッドの層を追加

金属3Dプリントに向けたデータ準備

Materialise Magicsで生成したサポートを付けて金属造形されたブラケット

Materialise Magicsで生成したサポートを付けて金属造形されたブラケット

設計の調整完了後はSTL編集ソフトウェア「Materialise Magics」上でスパイダーブラケットに3社のロゴを追加。最適な積層方向を見極めてから造形プラットフォームにパーツを配置し、サポート材が設計されました。金属造形を利用する場合、優れたサポート構造はパーツを支えるだけでなく、パーツの変形や造形中断のリスクを減少させる役割も担います。

今回のスパイダーブラケットを金属で3Dプリント準備には、Materialise Magicsの金属用サポート生成用モジュールが使用され、熱変形を最小に抑えるサポート構造が設計されました。

スライシングと造形

このスパイダーブラケットのように格子構造を含んだ複雑なパーツのSTLファイル容量は、非常に大きくなりがち。今回のブラケットはSTL化すると4GBほどの大容量データになると予想されていました。しかしデータが重いほど編集や造形前のスライシングにかかる時間も長くなってしまいます。

データ容量に関する課題を解決したのは、マテリアライズがレニショー製3Dプリンタ専用に開発したソフトウェア「Renishaw Build Processor」。強力なスライス技術を搭載したこのソフトは、格子構造をSTL上ではなくスライスされた平面レベルに適用することを可能にします。結果として、元の3DデータをそのままSTL化した場合と比べると格段に軽く扱いやすいデータが出来上がります。

全て準備の整った3Dプリント用データはその後レニショーに送られ、レニショー製3Dプリンタを使いチタンで造形されました。最適な造形用パラメータの見極めにも、レニショーが持つ金属3Dプリント技術とノウハウが最大限活かされています。
 

Build Processorソフトウェアのインターフェース

Build Processorソフトウェアのインターフェース

 「この軽量ブラケット製作は、高度なソフトウェア技術がなければ実現不可能なプロジェクトだったと思います」

Lieve Boeykens, Business Line Director for 3D Printing Professionals at Materialise.


3Dプリントを行う際はパーツがうまく造形できるかどうか毎回しっかりとチェックする必要がありますが、複雑なパーツほど造形可否の検証も難しくなります。マテリアライズの多彩なソフトウェア製品はこうした課題を解決するために開発されました。

今回のスパイダーブラケット製作において課題となったのは、アルテアのOptiStrucソフトウェアで生成された軽量構造を実際に3Dプリント可能なファイルへと仕上げること。トポロジー最適化を行っただけではすぐに3Dプリント可能なデータにはならないからです。

この課題を解決すべく、軽量ブラケットのデータ編集にはマテリアライズのソフトウェアを複数組み合わせて使いました。さらにレニショー製3Dプリンタ専用Renishaw Build Processorに搭載されたスライス技術で3Dプリント用データの容量を大幅縮小。3Dプリンタへのデータ送信もスムーズでした。

およそ4GBのSTLデータになると予想されていたスパイダーブラケットですが、造形は無事成功。金属3Dプリントの強みを活かした独自のデザイン、それを3Dプリント用に最適化するソフトウェア技術をうまく融合した作品となりました。進化を続ける金属3Dプリント技術と高度な3Dプリント用ソフトウェアの組み合わせで、未来のものづくりの可能性はさらに広がっていきそうです。