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スマートファクトリーを目指す

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30年間3Dプリントに携わってきましたが、3Dプリントはもう試作のためだけの技術ではなくなりました。スマート生産システムの開発は製造業に大きな変化をもたらし、システムは自動化され、より柔軟で、費用対効果の高い最終製品の製造を可能にしてくれます。

スマート製造市場は、今後数年間で3倍の規模になると推定されています。Zion Market Researchは、スマート製造市場の収益を、2017年の1,523億米ドルから、2023年までに4,790億米ドル まで達すると予測しています。パーソナライズされた製品への需要が高まることは、量産が少なくなること、そして顧客が常に次世代のモデルを求めていることを意味しています。つまり、この市場で成功するために、新しいモデルを早く製造することが必要ということです。

市場の変化に合わせてより複雑化する生産プロセスのトレードオフ対応として、マテリアライズはスキャンから後加工まで、デザインによるスマート製造をサポートするソリューション開発に注力してきました。2019年2月、この取り組みがAgoriaとSirrisの業界プラットフォームで「未来の工場」として認められました。

エコシステムとしての製造

マテリアライズは常に3Dプリントを推し進めてきました。私たちのソフトウェア開発チームは、将来の生産プロセス全体のトレーサビリティとリアルなフィードバックを可能にする洗練されたエコシステムを作り上げるのに役立つ、新しいソフトウェアの開発に集中してきました。

スマート工場に必要なのは、スマートな判断をするための機能と意思決定です。マテリアライズの全ての造形はSteamicsという管理システムにつながっています。Streamicsは作業全体のデジタルワークフローにつながるバッグボーンとしての機能を果たし、造形機使用の最適化に役立っています。Materialise Magicsは造形に適したデータ準備に使用され、Materialise Build Processorという造形機向けのデータ変換ソフトへ送られます。

しかし、本当のエコシステムと呼ぶためには、全てのパーツに関するフィードバックが欠かせません。Materialise Control Platform(MCP)と呼ばれる最新のソフトウェアポートフォリオは、造形機に直接配置されるハードウェアソリューションです。造形が進むと、MCPは直接レーザースキャナーやカメラなどと繋がっているため、そのデータをオンタイムのフィードバックにし、造形時に発生した問題のガイダンスを示してくれます。

しっかりしたプロセスのコントロールは、問題のあるパーツの廃棄、もしくはメンテナンス実施の判断など、課題に対する早急な意思決定につながります。さらには、材料や3Dプリンターによって必要とするアプリケーションの開発にもつながります。

スマート工場を成功させるためには、常に将来を見据えることが大切です。マテリアライズのR&Dチームがアディティブマニュファクチャリングに対する理解やリサーチに注力しているのはそのためです。リサーチプロジェクトマネージャーのTom Craeghsは、“私のグループが対象としている課題は、製造環境で起こりうる日常的な課題ではなく、この先数年で起こりうる課題への改善です。”と述べています。

デザインによるスマートな判断

変形、残留応力、温度の流動などは造形失敗につながる要因です。マテリアライズではこのような問題を事前に予測することで減らしたいと考え、シミュレーションツールなどを使って、造形前から造形失敗を防ぐ計画をしています。シミュレーションをすれば、造形失敗しやすい箇所を事前に把握し修正することができるため、造形の成功につながりやすく、それはパーツ品質をあげることにもつながることも意味します。

造形を開始するには、材料タイプ、プロセス、造形向き、サポートの生成といったいくつかの判断が必要になります。これらの判断は機能的かつ費用対効果の高いものである必要がありますが、これまではテスト造形を繰り返すことで答えがでるものでした。しかしテスト造形には時間とコストがかかり、場合によっては、造形中に何が起こっているかを把握することが難しいことがあります。

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アディティブマニュファクチャリングプロセスの理解とリサーチに注力するR&DチームのTom Craeghs

“だからこそシミュレーションが必要なのです。” Craeghsは言います。“実際のパーツがどのように造形されるかを想定することができます。事前に多くの判断をすることができるため、シミュレーションはスマートファクトリーのカギとも言えるでしょう。”

デザインに集中する

現在の工場をうまく機能させるためには世界最高水準の製造技術が必要ですが、さらにスマート化するためには工場はさらに踏み込んだコラボレーションが必要となります。

お客様は実際にモノをみて、機能を確認することで、実感を抱くものです。マテリアライズの全てのソフトウェアは、実際に自社工場で使用されています。その結果、実体験と知識をソフトウェアやサービスの改善に活かすことができるのです。

Craeghs はこう語ります。"私たちの会社が非常に強力でスマートなのは、3Dプリント企業向けにソフトウェアを提供しているからですが、そこにあるすべての開発や新機能は、私たち自身がよく検証して考えたものだからです。開発したソフトウェアを私たち自身が実際に使用して社内で造形や製造も行っているからこそできることなのです。もしも、私たちの生産を向上させてくれるようなもの、例えば、ある種の造形スピードを10%上げる新しいソフトウェアのアルゴリズムを開発した場合、そのアルゴリズムを弊社のMagicsやBuild Processorソフトウェアに搭載するようにしています。このように現場とお客様が密接に連携することで、具体的なアプリケーションのニーズを十分に理解することができます。また、過去のプロジェクトの成功例や失敗例を知ることで、技術を新たな領域に押し進めることができます。”

マスカスタマイゼーション

3Dプリントの主な利点の一つは、デザインの自由度が高いことです。 Materialise は、オペレーションやプロセスの柔軟な自動化をサポートするソリューションの開発に注力しています。私たちは、法外なコストや不合理な市場投入期間に縛られることなく、パーソナライゼーションや複雑性を取り入れるための新しい方法を常に模索しています。

3Dプリントは、ユニークでカスタマイズされた作品をオンデマンドで造形するのに適した技術ですが、問題はその作品をいかにして大規模に造形するかということです。世界初の3Dテーラーメイドのアイウェアの造形を例にあげてみましょう。 

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フェイシャルスキャンシステムにより、フルオーダーメイドのアイウェアを設計可能に . 写真提供: art nuve

革新的なパートナーシップのもと、マテリアライズとHOYAは「Yuniku(ユニーク)」を立ち上げしました。これは、眼科医がお客様の顔の形に合わせて設計し、レンズを中心に造られたフルオーダーメイドのフレームを提供できるデジタルプラットフォームです。従来、顧客は自分の顔の形と理想的なレンズの角度に最も適したフレームを探していましたが、今では眼鏡店は最適なレンズのポジショニングから始めて、オーダーメイドのフレームをデザインすることができます。顔をスキャンすることで、ブリッジやテンプルなどのサイズを正確に測ることができ、何世紀にもわたって続いてきた業界のやり方を覆すことができました。

マテリアライズのスマートソフトウェアソリューションを使用することで、「Yuniku」のような複雑なマスカスタマイゼーションプロジェクトを実現することができます。シミュレーションやリアルタイムフィードバックなどのツールにより、バリエーションを成功させるための境界を明確にすることができ、迅速かつコスト効率的にユニークな作品に命を吹き込むことができます。スマートファクトリーでの私たちの目標は、「作ることの唯一の限界は、夢を見ることができるかどうか」なのです。


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