患者の話

銃弾の貫通した肩甲骨再建、3Dプリンタ製インプラントで支援

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ある若いカップルの結婚式翌日、結婚に反対していた新郎の父親が新婦と彼女の両親を含めた6人を猟銃で殺害するという恐ろしい事件が起きたのは、2015年5月のこと。新婦の叔母として結婚式に参加していたナタリー・ドュッフォー・ダンジョンさんもこの事件に巻き込まれ、左肩に銃弾を受けながらも一命を取り留めました。

銃弾はナタリーさんの正面から肩関節に入り、肩甲骨を貫通。神経はなんとか無事だったものの、銃弾を受けた肩には手術後も痛みが残り、アイロンがけなどの日常動作も自由にできない状態に。12名もの外科医から「治療法はない」と言われ続けたナタリーさんの運命を変えたのは、3Dプリンタ製のカスタムインプラントでした。

「3Dプリントはただのおもちゃ」と言われても

肩の痛みを和らげてくれる外科医を探し、半年以上かけて12名もの外科医と面談したナタリーさん。それでも著しく肩を損傷していた彼女の治療を引き受けてくれる医師は現れませんでした。従来型のインプラントを使用したくても、大きく損傷した彼女の肩の骨にはインプラントを固定する場所がなかったのがその理由です。

3Dプリンタでカスタムインプラントを製作してはどうかとナタリーさんから提案しても「3Dプリントはただのおもちゃで、まだ試験段階にある装置。あなたに合うものではありませんよ」と言われる始末。

「これで希望が持てる」

そんな中、友人からの紹介でフランス、ディジョンにある大学病院の顎顔面専門医、ナルシス・ズウェテンガ医師と知り合ったことでナタリーさんの運命が変わり始めます。

ナタリーさんはこの時を振り返り、「はたして顎顔面専門の外科医が肩の治療の助けになるのだろうかと疑問でした。フランスで一番とされる肩治療の専門家にすら、治療法はないと言われていたんですから。でもズウェテンガ医師は『何か処置を施せるはず』と言ってくれたんです。驚きました。初めて前向きな回答をしてくれたドクターに会えてほっとすると同時に、これで希望が持てると思いました」と語ります。ズウェテンガ医師は本格的な治療法を探るため、同病院に勤務する整形外科医、ブライス・ヴィアード医師をナタリーさんに紹介しました。

初めて前向きな回答をしてくれたドクターに会えてほっとすると同時に、これで希望が持てると思いました。

通常のインプラントでは再建できない、重度の関節損傷

紹介を受けたヴィアード医師は「ナタリーと初めて会ったとき、これが特殊なケースであることがすぐにわかった」といいます。診断は、現在の技術では治療が難しい重度の関節損傷。上腕骨は基部の関節面がなく、かなり変形していました。3D画像からはバラバラになった骨の断面が三角筋の内側に突き刺さったり、繊維膜に引っかかっている様子も見て取れました。

さらに大きな問題となったのは、関節窩(グレノイド)の重度の破壊。ヴィアード医師は術前の状態について、次のように説明しています。「通常のインプラントはこのように大きく損傷している肩用には設計されていないので、このようなケースを再建するには適していないと判断しました。通常のインプラントではナタリーの肩甲骨の骨を固定するのは不可能でした」

意志があるところには方法があります

そこでヴィアード医師は、損傷したナタリーの肩に合わせてインプラントを作成し、3Dプリントすることを決定。術前計画を立てる上でマテリアライズと協力したことが大きな助けになったといいます。「今回のように特殊なケースに対処する現実的な手段は、カスタムインプラントを3Dプリントする以外にありませんでした。マテリアライズの臨床エンジニアとのやりとりはとても実践的で、段階的に患者適合型インプラントを作成することができました」

術後のレントゲン画像を見ると、ナタリーさんの肩の状態に合わせて3Dプリントされた「逆型肩プロテーゼ」が上腕部骨側と関節窩側の両方に設置されているのがわかります。

非常に満足のいく結果

ヴィアード医師によると、術後の経過は非常に順調とのこと。「手術から一カ月ほど経ちますが、関節の動きは大変良好で、ナタリー本人も結果にとても満足しています。インプラント内の骨の内部成長を確認するにはやや時期尚早ですが、短期・中期的な結果としては十分満足のいくものです」

一方、肩の手術を経たナタリーさんは「意志あるところに道は開ける」と語りました。「この事件の生存者として、惨めさや憎悪、痛みに目を向けるのではなく、何かポジティブなものを生み出したい。この経験を生かして、他の人の役に立ちたいと思っています」

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