バーチャルリアリティ技術を使用している男

インタビュー

UCSFの実例: AR、VR、および3Dプリンティングが放射線科と外科のギャップを埋める

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拡張現実(AR)、バーチャルリアリティ(VR)、3Dプリンティングなどの3D技術は、2Dディスプレイの3D画像で見るよりも多くの情報を提供するため、UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ校)の外科手術計画において重要なツールとなっています。UCSFは、世界でも有数の学術医療センターであり、多くの専門分野で高いレベルの治療を提供し、広範な医学研究と技術革新の取り組みをサポートしています。 

UCSFの研究や患者ケアにおけるAR活用について小児放射線科医のJesse Courtier博士に話を聞きました。 

UCSFで3D技術(AR/VR、3Dプリンティング)の活用を進める理由は何ですか?

「UCSFは、多くのサブスペシャリティにまたがる非常に複雑な手術が集まるセンターです。そのため、より高度な手術計画が要求されます。医用画像は、計画において非常に重要な役割を果たしています。3D画像は、2Dディスプレイ上の単純な3D再構成では成しえない、複雑な症例の手術計画のために重要な情報を外科医に提供します。私の場合、小児放射線科医として、CTやMRIからの複雑な情報をチームの外科医にわかりやすく情報提供しなければなりません。」 

「3DプリンティングやAR(私の専門分野)などの3D技術は、放射線学の2D世界と実際の手術での3D世界との間のギャップを埋めるために役立つ強力なツールです。さらに、手術の観点からは、洗練された計画を立てることで、複雑な症例の全体的な負荷を軽減する方法を見つけられることも、大きな利点です。」 

ARを適用する主な用途は何ですか?

「私は、多くの分野でのARの応用を考えていますが、特にARを使って計画を立てるのに適したサブスペシャリティがあると思います。整形外科、心臓胸部外科、インターベンショナル・カーディオロジー、肝移植、小児外科などの専門分野は、視覚空間の複雑さと解剖学的なバリエーションが多い症例を扱います。私はこれまでにUCSFで80以上のARモデルを作成してきました。具体的な例としては、複雑な小児肘骨折、変形修復、大型肝腫瘍、複雑な先天性心疾患などがあります。」 

「私たちは、医学生の解剖学グループセッションにおけるモバイルAR技術の応用についても研究しています。さらに、先天性心疾患の患者教育におけるARの研究も始めています。患者の状態を理解することで、患者のコンプライアンスを向上させ、不安を軽減する可能性を探っています。」 

ARは3Dプリントをどのように補完するでしょうか?

「ARは、経済的かつ環境にやさしい方法で、迅速なプロトタイピングと反復的なモデルの改良を可能にします。モデルは、物理的なモデルの制約(重力、厚み、プリンタサイズ、コスト)に関係なく、完全な解剖学的スケールで繰り返しテスト及び表示できます。また、物理的なモデリングを必要とせずに、チームのメンバーと3Dモデルを共有することで、リモートでのコラボレーションが可能になります。」 

医用画像データの作成にはどのようなソフトを使用していますか?

「最初は、フリーウェアや規制のアプリケーションを使って3D世界へ足を踏み入れました。しかし、UCSFで様々なモデルを作成していけばいくほど、より洗練されたソフトウェアアプリケーションの必要性を感じるようになりました。堅牢で、さまざまな機能を備え、ユーザーエクスペリエンスとユーザーインターフェースの設計について考えられたソフトウェアを必要としていました。

UCSFでは、Center for Advanced 3D Imaging +(私が共同ディレクターを務める)を通じて、Materialise Mimics Innovation Suiteを購入し、その機能と能力に感銘を受けました。現在は、「Radha」(または、Radiology with Holographic Augmentation)と名付けたMicrosoft HoloLens用の特定のARアプリを最適化するための最終ステップとして、Blenderを使用してARの最適化色、シェーディング効果、およびポリゴン数を追加しています。」 

画面上でプロセスを見ている別の男とバーチャルリアリティ技術を使用している男

Materialiseのソフトウェアは、あなたの仕事をどのように変えましたか?

「私たちがZSFGH整形外傷研究所で取り組んでいる現在のプロジェクトは、複雑な寛骨臼骨折の術前分類を改善するための3DARモデルの評価です。これらのモデルによって、骨折の分類における診察者によるばらつきの度合いを軽減することが出来ると仮定しています。Mimicsの厚さ分析ツールで作成された3DARモデルは、骨の厚さに基づいて固定デバイスの最適な配置を決定できるかを調査することを目的としています。」 

ARの使用によって影響を受けた特定の症例や患者について教えてください

「ある症例は、非常に複雑な先天性の心疾患と腹部の奇形を持つ患者さんで、大規模な胸壁と腹壁の再建修復を必要としていました。小児外科、小児心臓胸部外科、形成外科の間で術前計画が立てられました。私は、この症例を細分化し、皮膚表面、骨、心臓、肺、気道、臓器、腸を含む全体のホログラフィックモデルを作成しました。同様のモデルは、他の方法で表示するには非常にコストがかかり、困難です。手術前のカンファレンスでこのモデルを使って検討し、その症例は大成功しました。」 

今後、このテクノロジーの医療における継続的な成長をサポートするために何が必要ですか?

「拡張現実が、麻酔時間、手術室での時間、透視下におかれる時間などの臨床転帰に与える影響についての継続的な証拠は、この技術が広く採用される上で重要だと思います。単に静的な表現ではなく生理学的な動き(呼吸、心拍数など)を反映するアニメーションモデルのように、より大きく複雑なモデルを実現するために、ARのハードウェアとソフトウェア両方の継続的なイノベーションも必要です。これにより、術前計画などのための現実的なシミュレーションと概念化が可能となります。 



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