Shoko Ohashi 6月 5, 2019

 

4月20日土曜日に、Materialise Medical Congress を開催いたしました。このコングレスは、3D技術を活用するMimicsユーザーやMimicsに興味を持っていただいている先生方向けに、例年秋に行っているものです。今年は初めて4月の開催となりました。年度の変わり目、学会等も重なる忙しい時期ではありましたが、60名以上の皆様にご参加いただきました。 

今回は、その講演より、我汝会えにわ病院 整形外科 安倍雄一郎先生のご講演を紹介いたします。

安倍先生には、「側弯症矯正手術におけるバイオメカニクス:有限要素(FE)モデルによる高生体適合型インプラントの開発」と題してお話いただきました。 今春に上市された高生体適合型インプラントの開発の経緯、その過程での課題解決、また、それにMaterialise Mimicsが果たした役割とは。

 

壊せるサンプルなしに安全に治療するためには

安倍先生は、北海道大学に所属し、大学と病院で特発性側弯症(AIS)を年間約60例扱います。 側弯症は、in vivoやキャダバーで治療のシミュレーションや実験ができるものではありません。壊せるサンプルがない中で、いかに力学的に安全に治療ができるかは、常に 重要な課題となります。

 

立体復元によるインプラント応力推定

特発性側弯症(AIS)の矯正固定術は、スクリュー(PS)を椎体にさして、ロッドの力で曲がりを押して戻すという方法です。

側弯症治療の歴史の中では、PSの数を減らしたり、より硬いロッドを使って矯正をしようというトレンドがありました。

しかしながら、トレンドとなる側弯矯正の安全マージンはどの程度なのかということはわかっておらず、より良い治療を考える前に、まずこの根本的なことについて検証をする必要がありました。

 

そこで北海道大学チームが活用したのが、有限要素モデル解析(FEM)です。

北海道大学チームでは、これまでの側弯症の手術とは異なり、金属を体内で変形させない術式を採用しています。それによって、Instrumentに生じる力を以下の通りに計算することができました。

F (Instrumentに生じる力) = Kr (ロッド物性) × Sr (変位)
※変位量Srは矯正力Fを反映

これを使って、FEMを測定手法として利用することとしました。

側弯症治療では、通常、背骨の左にConcave ロッド、反対側にConvex ロッドを入れます。体内に入れる直前のこのロッド形状と、術後1週間の3DCTデータによるその形状を比較しました。すると、脊椎にかかった力を反映し、Concaveのロッド形状に変化が見られました。 次に、各PSの穴にかかった力を見てみると、Concave rodはConvex rodよりも約4倍の負荷がかかっていることがわかりました。

更なる検証では、術中の矯正直後にはより強いストレスがかかっていることが示されました。そして、術中の引き抜きや押し込みのストレスは、それぞれのそれまでの推定値よりも約1.5倍の力が加わっていました。これは、PS1本に最大で24kg(こどもが一人分)のストレスがかかっていることになります。

このように、“背骨にどれだけの負担がかかっているのか”、漠然とした経験則ではなく具体的な数値で表すことができました。

それでは、この結果をもとに、より安全により良い治療結果を得るためにはどうすればよいのでしょうか。以下の選択肢が挙げられました。

アンカー強度を上げる?
アンカーを増やす?
脊椎の剛性を弱くする?

過去の研究をもとに、矯正をかける範囲で、椎間板の後ろの関節を全部切ることにしました。 これにより、骨と骨の間が柔らかくなり、ロッドにかかっているストレスが軽減されることが確認できました。

更に、これは、後弯の獲得とアンカーの削減の検証につながっていきます。 これらの検証を通して、PSは減らせるのか?という問いに対して、以下の2つの回答を得ることができました。

  • Concave(凹側)のアンカーは削減できない
  • Convex(凸側)のアンカーは三分の一まで削減できる

このように、バイオメカニクスを活用することで、限界値についても具体的な数値を得ることができました。

 

Mimicsを用いた理論モデル作成

次に北大整形外科チームが考えたことは、以下の2点でした。
患者ごとに最適なアンカーの数は?
力学的に最適なロット形状は?

これが、高生体適合性インプラントの開発へとつながります。
※このプロジェクトは同大学脊椎・脊髄先端医学講座の須藤英毅准教授がプロジェクトリーダーとして国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の平成 28 年度「医工連携事業化推進事業」に採択されています。

まず、これまでの研究で得られた実データに即して、Materialise Mimicsで患者ごとのFEAモデルを作成しました。そして、至適ロッド形状を割り出し、最後にFEAで検証を行いました。

 

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この研究作業を進める上で、以下の2点が大きな課題でした。

  1. 大量のセグメンテーションが必要であること(各症例で背骨20個ほどを抽出)
  2. 内部衝突なくセグメンテーションすること

 

1 は、通常の方法でセグメンテーションをかけると非常に手間と時間がかかる作業です。
Materialise Mimicsでは、オートセグメンテーション機能を使うことによって、このようなモデルを高速で抽出することができます。今回のように大量のパーツをわけていく際には、非常に有用な機能です。

また、FEAモデルを作成する際に、内部干渉があるとすべてはじかれてしまいます。そのため、内部衝突なくセグメンテーションすることは不可欠でした。ここでは、衝突するエッジを離すことができるMimicsの機能を使うことで、簡単に隙間を作ることができました。

最終的に、FEAで上記の妥当性を検証することで、側弯形状にあったインプラントの開発、そして商品化が可能となりました。

 

今回は、側弯のタイプに応じた高生体適合インプラントの開発についてお話いただきましたが、安倍先生はバイオメカニクスとコンピューターシミュレーションを軸に他にも様々な研究をしていらっしゃいます。

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