Yui Takahara 4月 5, 2016

HOYAビジョン・シュミレーター

 

眼科用レンズのグローバル市場をリードするHOYAグループ企業、HOYAビジョンケア社とのコラボレーションを通じてマテリアライズが開発したのは、眼科医による視力検査をグレードアップし、消費者体験を向上させる2つの新デバイス。新規開発されたデバイスのひとつ「HOYAアイ・ジーニアス」は個視ずれの矯正に理想的なプリズム処方を計算する、全く新しい高精細視力測定機器。60種もの視力検査パターンを内蔵したこの機器を使い、眼科医は屈折検査、両眼視機能検査、視覚機能検査といった包括的な測定を簡単に行うことができます。

 

HOYAアイ・ジーニアス

 

一方の「HOYAビジョン・シュミレーター」は消費者がHOYA製レンズを購入前、そのレンズを通して見える視界を3Dで体験できるVR(バーチャルリアリティ)機器。リアルな身の回りの環境がレンズの強さに合わせて立体的に表現されるため、購入前のレンズを店舗内で試すことができます。「HOYAアイ・ジーニアス」、「HOYAビジョン・シュミレーター」共に、視覚入力にはタブレット、テレビ画面、スマートフォンが用いられます。

3Dプリントだからできる、市場の変化への素早い対応

3Dプリントを用いて今回のような革新的な製品を大量に製造するには、設計面や製造面での課題克服に加え、反復可能な認証済み生産プロセスが必要となります。またHOYAのように技術革新を基盤とする企業の場合、市場の発展に合わせて提供するシステムを常にアップグレードしていくことが欠かせません。しかしスマートフォンが日々進化を続ける中、スマートフォン用内部スロットを備えたVRゴーグルの開発は簡単ではありません。変化する設計に合わせてアップグレードできる製品を迅速に市場へ投入するにはどうしたらよいのでしょう。 スマートフォンをVRシュミレーターとして利用する場合、合理的なきょう体(カバー)の設計が重要なポイントとなります。HOYAビジョンケア社欧州・中東・アフリカ地域担当ニューメディアマネージャー、フェリックス・エスパーニャ氏は「スマートフォンは様々な高画質の視覚情報を表示できますが、真のバーチャルリアリティ体験を実現するにはゴーグル型のカバーとハイテク光学レンズを併用する必要があります。周辺視野を含めて着用者の視界を完全に包み込み、着用者が画面の視覚情報以外受け取れないようにするためです」と解説。

こうした製品アイデアを念頭に、HOYAはマテリアライズへ共同開発を打診しました。前述のエスパーニャ氏は3Dプリントを生産に用いるメリットについて、次のようにコメントしています。「3Dプリントは圧倒的に柔軟な設計を可能にすると同時に、量産体制への移行を迅速化します。その結果、市場のニーズ変化に素早く対応することができるのです」

 

どんな顔にもスマートフォンにもぴったりフィット

EyedakやHOYAのエキスパートを交えたコ・クリエーション(協創)セッションを元に、マテリアライズのエンジニアチームは3Dプリントの利点を最大限活用した「HOYAビジョン・シュミレーター」の設計開発に着手しました。3Dプリントが可能にする設計の自由度を活かして最大限の機能をデザインの中に直接統合しつつ、製品の美しさや有機的な形状といった点も考慮しながら開発を進めます。 HOYA_Vision-Simulator_designed by HOYA and Materialise

「HOYAビジョン・シュミレーター」の開発で一番の課題となったのは、輪郭や眼の位置にぴったりとフィットするケースの設計。ケース内部にはスマートフォンを装着するスロットが搭載されています。このスロットは、どのようなスマートフォンの機種にも完璧にフィットするよう、カスタマイズすることが可能です。どんなレンズの処方時にも最高の視覚効果を実現できるよう、必要であればアイケア専門家が選んだ光学レンズを挿入できる機能も備えています。また眼の間の距離を調整できるダイヤルをデザインに取り入れることで、千差万別の顔の形状に合わせてケースを調節することができます。

 

HOYA_Vision-Simulator_Eyecare device using smartphone

 

一方の「HOYAアイ・ジーニアス」に関しては、HOYAの協力の下、タブレット用のマウントやスタンド、TV画面用のきょう体フレームを設計したマテリアライズのエンジニアチーム。レーザー焼結3Dプリント技術のメリットを最大限に活用し、視角を変更できる統合スイベルヒンジや、磁気ロックを備えたドッキングステーションを取り入れました。

HOYA_EyeGenius_Changes eye examination

 

5営業日で新バージョンを量産開始

新開発された「HOYAアイ・ジーニアス」と 「HOYAビジョン・シュミレーター」の外部カバーはどちらも、光造形で3Dプリントしたマスターコピーを元に真空注型法で製造。「HOYAビジョン・シュミレーター」の内部構造はレーザー焼結技術を用いて3Dプリントされています。「3Dプリンタ製の内部部品と真空注型で制作する外部カバーを組み合わせることで、驚異的な早さの市場投入が可能になりました。将来的に設計をアップグレードするコストも最小限に抑えることができます」と語るのは、マテリアライズのアリレザ・パランディアン氏。デジタルデバイス技術が急速に進化する中、スマートフォンやタブレットを用いるシステムにとって市場投入時間とアップグレードコストは極めて重要です。こうした製造方法を組み合わせることで、例えば更に薄くなった次世代iPhoneが現在の 「HOYAビジョン・シュミレーター」に合わなくなった場合でも、5営業日で新バージョンの量産を開始することが可能となるのです。

 

HOYA_Vision-Simulator

 

3Dプリンタ製VR機器で視界をシミュレーションしながら、最新の高精細技術で視力を検査する―。次回皆さんが眼科や眼鏡店を訪れる際には、そんな体験ができるかもしれませんね。

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