Yui Takahara 9月 29, 2016

イギリスに住むミナ・カーンちゃんは、心臓内部の心室を仕切る壁に穴が空いた状態で生まれた2歳の女の子。彼女の患っていた複雑な先天性心疾患は、経験豊富な小児科医にも治療が難しいものでした。そこで医師らは3Dプリンターを用いてミナちゃんの原寸大の心臓を造形。術前に精巧な臓器モデルを手にとり患者の心臓をくまなく確認できたことが、治療の成功につながりました。

ミナ・カーンちゃんが生まれつき患っていたのは先天性心室中隔欠損(Ventricular Septal Defect または VSD)の複雑なケース。心室を仕切る壁に穴が空いた状態の心臓は彼女の命を脅かすだけでなく、心臓のポンプ機能を正常に動かすだけでも非常に体力を消耗します。そのため常に息切れ状態にあるミナちゃんは食べることや体重を増やすこともままならず、髪の毛も生えないほど。特に小さく繊細な幼児の心臓に空いたこの穴を塞ぐ手術は、どんなに経験値のある小児外科医にとってもリスクの大きなものとなることは明白でした。

 

2歳女児の先天性心疾患治療 3Dプリンタ製臓器モデルで術前計画支援

治療当時2歳だったミナちゃん

 

そこでロンドン、セント・トーマス病院のドクターは、医療用3Dソフトウェア Materialise Mimics Care Suite を使い、CTスキャンの二次元データをもとにミナちゃんの心臓を立体データ化。そのデータを使って小さな心臓のモデルがマテリアライズで3Dプリントされました。さらに手術の手順を計画するため、同ソフトを用いてミナちゃんの体に合わせたゴアテックスパッチ(心臓の穴を塞ぐ生体適合材料の薄い膜)もコンピューター上でデザインされました。

3Dプリンターで製作された患者の心臓の完全レプリカは、パッチを正確な箇所に縫い付ける複雑な工程を視覚化。さらに3Dプリントされた臓器モデルを手にとって見ることで担当外科医らは術前にミナちゃんの心臓内部の構造を深く理解でき、心臓に空いた穴の正確な寸法と位置を知ることができたといいます。

 

3Dプリンターで製作された患者の心臓の完全レプリカ

ミナちゃんの小さな心臓が、3Dプリンターで精巧なレプリカに

 

医師同士のコミュニケーションを円滑化し、チーム内の手術へ対する自信を高めることも3D臓器モデルを用いる利点のひとつ。ミナちゃんの心臓のモデルを作成、3Dプリントした小児循環器専門医のタリケ・フサイン医師は「複雑な心臓手術について話し合うときに原寸大の臓器モデルを見て触ることができるということは、患者さんごとに最適な治療法の視覚化ができるということです」とコメント。「実際の執刀医はどんな処理をどの程度必要としているのか、手術をしない小児循環器医も臓器モデルを使えば正確にわかりやすい。これは我々の診断ミスを最小限に抑えることにもつながります」

BBCでも紹介されたこのケース。リンク先よりビデオもご覧いただけます。術後のミナちゃんの状態は至って良好。食事も通常通りできるようになった彼女は順調に成長し、健康で幸せな毎日を送っています。  

 

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