Yui Takahara 7月 10, 2017
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3Dプリントで鋳型製造の工期が10分の1に

創業以来40年に渡って鋳物部品の製造を專門としてきたコイワイ。3Dプリントが導入されるまで、鋳造用の型製作には主に木型を使用してきました。この製法では工作機械による加工と職人の手作業で木型を完成させた後、砂型を製作する必要があるため、鋳造の完了までに通常10日前後の時間を要します。

昔ながらの鋳型製作の現場が大きく変わったのは、2007年に3Dプリンターの導入を決めてから。「高精度、かつ複雑な形状の砂型を、短時間で手に入れたい」と願う顧客のニーズを満たす技術として選ばれたのが、当時はまだ知る人の少なかった3Dプリントでした。

3Dプリントを使えばデータを直接造形できるため、手間のかかる木型に頼ることなく鋳造が完了します。そのため従来の木型工法に比べ、工期は最大10分の1に短縮。さらに以前は木型製作が難しかった複雑な形状の砂型も、3Dプリントを使えば生産が可能になります。

当時メジャーな工業技術としての3Dプリントの知名度は低かったものの、その強みをいち早く見出し思い切って鋳造事業に取り入れたコイワイの決断は、業界の常識を大きく変えました。

小田原市にあるコイワイの本社
小田原市にあるコイワイの本社

金属3Dプリントによる量産、その実現に向けた課題とは

さらにコイワイはスウェーデンのアーカム社から3D電子ビーム金属粉末積層造形(EBM)3Dプリンターを購入し、2013年1月日本初の業務用金属3Dプリントサービスを開始。チタン、アルミやコバルトクロームなどの金属素材を使って部品を直接製造できるこの3Dプリンターで、医療用人工関節、インプラントの製造やロケットエンジン部品、自動車用エンジン部品の試作を請け負っています。

コイワイの社長を務める小岩井豊己氏は金属3Dプリント事業を開始した2013当時、経済産業省の発行する「METI Journal」とのインタビューの中でこう語っていました。「金属3Dプリントを使えば、これまでにない造形が実現できます。ものづくりの現場にこの手法が根付けば〝3Dが前提″という新しい発想が生まれるに違いありません」。それから4年が経った今、小岩井社長の予想通りさまざまな業界が金属3Dプリントのメリットを認識し、量産用の技術として本格的に採用し始めています。

金属3Dプリント中のコイワイのロゴ
金属3Dプリントされるコイワイのロゴ。レーザーで金属粉末を溶解するため、このように火花が散ります。

金属3Dプリントで量産される製品の多くは、航空機用エンジンノズルや人の身体に入れるインプラントなど長期に渡って使われるもの。それらの金属部品を安全に使っていくには、どのパーツがどの3Dプリンターで、いつどんな条件で作られたのかといった生産過程に関する膨大な情報を記録し、いつでも引き出せる状態にしておくことが重要な課題となります。複数の3Dプリンターを使って均一な品質のパーツを大量に生産していくなら、その重要性はさらに高まります。

すでに金属3Dプリントによる量産を開始しているGEのような企業は、生産管理用ソフトウェア「Materialise Streamics」を使ってこうした課題を解決しています。このソフトウェアは、マテリアライズが保有する140台以上の業務用3Dプリンターを管理し、3Dプリントによる製造工程の統括を可能にしているシステムでもあります。さらに金属3Dプリントを活用した精密部品生産の規模拡大を視野に入れるコイワイも、先日Streamicsを導入決定。徹底的な生産管理体制を整え、厳しい水準の要求される業界に向けた金属3Dプリントサービスを強化することが狙いです。

コイワイで金属3Dプリントされた部品
コイワイで金属3Dプリントされた部品

 

3Dプリントにしかできないものづくり

ソフトウェアとハードウェア(3Dプリンター)の進化に伴い、3Dプリントはメジャーなものづくり用の技術として認められつつあります。ただし現時点では「3Dプリントでなくても製造可能なもの」を大量につくるなら、従来の製造技術を使った方が安価なのも事実。3Dプリントの強みを本当に活かせる用途は、ひとつずつ異なった製品を大量につくる「マス・カスタマイゼーション」や、その他の技術では実現できない複雑な構造の造形です。その理由はトポロジー最適化手法を用いて設計された「軽くて強い」構造など、複雑になりがちな設計も3Dプリントなら造形が可能になるため。

3Dプリントの強みを本当に活かしたものづくりは、何を作るか、3Dプリントを使うことでどんな付加価値が生み出せるか検討する段階から始まります。それを実現するには造形に対する深い理解やエンジニアリングの知識を持った人材が設計・企画の段階から協力しあうことが不可欠。だからこそ3D造形に関する豊富な知識を持つサービスビューロ―は3Dプリントを活かして自社のものづくりを変えたいと願う企業にとって、強い味方となるのです。

本社隣のビルで研究開発活動が行われます  ​
本社隣のビルで研究開発活動が行われます  ​

社内で10年以上3Dプリントを使いながらそのノウハウを蓄積してきたコイワイも「3Dプリントに興味のある企業が、その価値を活かしたものづくりができるよう助けたい」との思いから3Dプリント用エンジニアリングサービスをさらに強化していく予定。設計最適化用ソフトウェア「Materialise 3-matic」を導入し、3Dプリントの利用価値を活かした高度なものづくりを日本国内、そしてアジア地域に広げていきます。

積極的な3Dプリントへの取り組みと投資で鋳造業界を変革し、さらには国内3Dプリント産業をリードしてきたコイワイ。彼らが目指す緻密な生産管理と3Dプリントの利用価値を活かした設計はどちらも、この技術の利用が広まるにあたってますます重要になる要素です。3Dプリント事業を次なるレベルへと引き上げたいと願う方、マテリアライズがソフトウェアの力で目標達成をサポートします。貴社に最適なソフトウェアの組み合わせなど、お気軽にご相談ください。