yui 6月 7, 2017
Categories Industries


ーまずは生い立ち、デザイナーとして何からインスピレーションを得るかなど、簡単に自己紹介をお願いします。
 

それは中々答えるのが難しい質問ですね、全部答えるには数年かかるかもしれない。僕は一般的にデザイナーと呼ばれているけど、それが何たるかは正直よくわからない。

僕は16歳の時からデザインの仕事をしていて、イッセイミヤケ、ハーマンミラー、ソニーなど、世界中のブランドとコラボレーションしてきた。常に新しい領域のプロジェクトに挑戦したいと思っている。僕のようにインダストリアル・デザイナーという職に就いている人は、ブラシ、スーツケース、時計、靴、飛行機まで、すべてのデザインを手掛ける。かなり漠然としているし、終わりのない職業なんだ。だからすでにやったことの繰り返しはしたくない。常にチャレンジを続けたいんだ。
 

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ーよくデジタル技術を作品の制作に取り入れていらっしゃいますが、こうした技術の利用はデザインの限界を広げるのに一役買っているのでしょうか。
 

そう、まったく新しい作品を作りたいなら、製作過程も変える必要がある。それはアートから科学まで、すべてに当てはまること。前例のない、新しい技術が利用可能なら、使わない手はないよ。特にデザインのようなクリエイティブな領域ではね。僕はいつもそのルールに従ってきた。

前例がないということは、パラダイム・シフトを起こせるということだ。ロイヤル・カレッジ・オブ・アートにいた頃から、僕はいつもそのことを意識してきた。1982年には、コダックのディスクカメラの「再デザイン」を修士号の卒業制作プロジェクトとして選んだ。ディスクカメラは当時最新の撮影技術を利用したカメラだったんだけど、その外観とケースは本当にがっかりする出来だったんだ。残酷なまでに普通だった。

新たな技術が生まれたばかりのタイミングは、まだ前例が作られていないということ。つまり何の制約もなく、アーティストのように自由にものの定義を考えられるということだ。こうしたパラダイムシフトに影響された「再デザイン」プロジェクトは多数存在するけれど、僕が興味を持っているのは再デザインという行為の結果というより過程だ。世界をモノで満たして汚すためだけに、何か新しいものをデザインしたくはないからね。
 

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ーデザインを目に見えるモノへ変える技術として、3Dプリントを選ばれたのはどうしてですか?
 

3Dプリントにはずっと興味があったし、使わない手はないから、かな。僕が学生のときはコンパスを使って設計デザインをしていたけど、その後デザイン技術のさまざまな進化をこの目で見てきた。コンピューター上での設計技術やソフトウェアが登場したばかりの頃は、慣れるまでとても大変だったよ。でもこうしたソフトウェアが新たなものづくりの方法を生み出してきた。

従来、最終的にそれが製作可能になるかわからなまま、とても複雑な3Dや4Dのデザインを作っていた。われわれは非常に多くのものをいまだに原始的な方法で製造しているから、そうした作品はもちろん実現がとても難しかった。

でも3Dプリントをデザインに用いるなら、どんな形状の創造も可能になる。しかも昔は設計画を描くだけでも1ヵ月くらいかかることが普通だった。デザインしたものを形にする過程も含めて昔は4ヵ月かかっていたプロジェクトが、今は3Dプリントを使えば4週間で完成してしまう。

僕は自分のスタジオでデータをつくって、それを暗号化したあと、マテリアライズに送る。彼らは届いたデータを開いて、エンジニアチームと僕のデザインをどう3Dプリントすべきか相談する。その後はボタンを押して造形するだけだ。わずか3日でデザインを完成させることもできる。これは素晴らしいことだと思う。
 

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ー現在ポンピドゥセンターでラブグローブさんの展覧会 “Mutations – Creations” (集合と創造)が開催中ですが、このテーマについて少し解説いただけますか?
 

僕はキャリアの中で、アナログからデジタルへの移行を遂げてきた。それは僕の展覧会の中にも表れていると思う。初期の作品にはとても有機的本質主義から生まれた形状が含まれていて、それが段々とコンピュータを使ったデザインによって変化していくのがわかるはず。その延長線上に、僕がマテリアライズと一緒にやっている3Dプリントを使ったデザインがあるんだ。

僕は3Dプリントをアートの一種として見ていて、デザイン、自然とアートを全て集合できる技術だと考えている。今回展示されている3Dプリンタ製作品を通じて、僕自身のスタイルをポンピドゥセンターの建築と文化を同調させることも狙いのひとつだ。
 

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ー展示中の作品の中で、特に気に入られているものはありますか?またその作品のインスピレーションはどこから得られましたか?
 

この展覧会は、僕の世界をさらけ出して出来上がったものだ。展覧会の中心となるガラス張りのパビリオンには、僕のスケッチブックを24冊展示している。デザイン画や私的な考えが詰まったスケッチブックを見ていると、オーガニックなデザインと融合した3Dプリントの出現が予測できる気がするんだ。このスケッチブックを通じて僕の世界、能力そのものをさらけ出していると言ってもいいかもしれない。

18年かけて完成させたボール型の自律走行車をイメージした作品も展示されているんだけど、これはマテリアライズで3Dプリントされたもの。これと一緒に像の頭蓋骨が飾ってあって、その二つの間にはまだ存在していない、新しい物体があるんだ。それが僕の気に入っている作品。原始的でありながら現代的な彫刻を目指して「集合」と題した。

パリへ行かれる機会がある方は、2017年7月3日まで現代美術館ポンピドゥセンターで開催中のラブグローブ氏の展覧会 “Mutations – Creations” (集合と創造)に足を運んでみては?