Yui Takahara 5月 10, 2017

先月20日から21日にかけ、ベルギーの首都ブリュッセルで行われた「マテリアライズ・ワールド・サミット」。世界中の参加者と3Dプリントの未来について議論することを目的に、マテリアライズが隔年開催している国際サミットです。今年もGE、エアバス、シーメンスなどの大手製造業や世界の医療機関による多数の講演が2日間に渡って行われました。イベント内で3Dプリントのプロ達が語った、2017年の3Dプリント市場トレンド4つをまとめて紹介します。


1.ブームが去った後も、3Dプリントは本格的な製造業の一部になっていく見込み

3Dプリントという言葉が一気に広まったのは2013年から2014年にかけて。当時は「各家庭に1台小型3Dプリンターが置かれる日も遠くない」といった楽観的な予測が飛び交いましたが、2017年現在3Dプリントブームは落ち着いた様子です。それでも大手製造業を代表するスピーカーからは「3Dプリントは我々のものづくりに欠かせない技術になった。そのトレンドは今後も続くだろう」との声が聞かれました。

例えばGE AdditiveバイスプレジデントのMohammad Ehteshami氏は「従来855もの部品を組み合わせて製造していたエンジンパーツが、金属3Dプリントの使用によって12の部品で製造可能になった」と発表。航空機用エンジン部品の大量生産に3Dプリントを活用しているGE Additiveの取り組みについては、以前の記事でもお伝えしました。

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ドイツ鉄道(DB)全車両のメンテナンスを監督するUwe Fresenborg氏も「旧型電車のメンテナンスに必要な部品は入手不可能となっているものも多い。それでも旧型電車を安全に使い続けられるのは、スペアパーツを3Dプリントで生産できるからだ」と講演。このように本格的な製造技術としての3Dプリント利用が世界で広まっていることを考えると、3Dプリント関連産業の未来はまだ明るいと言えそうです。

サミットで講演するGE AdditiveバイスプレジデントのMohammad Ehteshami氏

サミットで講演するGE AdditiveバイスプレジデントのMohammad Ehteshami氏

メイヨー・クリニックで行われているさまざまなメディカル3Dプリント事例を紹介したジョナサン・モリス氏

メイヨー・クリニックで行われているさまざまなメディカル3Dプリント事例を紹介したジョナサン・モリス氏


2.技術的に成熟した3Dプリントは、医療の現場も変えつつある

チタンなどの金属素材で正確な3Dプリントが可能になった今、この技術は製造業以外の領域にも広まりつつあります。そのうちのひとつは規制の厳しいヘルスケア業界。例えばサミットの基調講演に登場した米メイヨー・クリニックのジョナサン・モリス医師は、約8年前から医療の現場で3Dプリントを使い始めたパイオニアです。

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現在メイヨー・クリニックの全外科手術を対象に、年間300から400の生体データに基づいた臓器モデルを3Dプリントしていると語ったモリス医師。「複雑な症例を扱う場合、リアルな実寸大3D臓器モデルを手にして初めて理解できることも多い。3Dプリントしたモデルを使い患者の生体構造をしっかりと把握しておくことは、最適な治療方針の見極めにつながる」と語りました。このトレンドが他の医療機関にも広がれば、最適な治療計画の策定支援を通じて3Dプリントが患者さんの運命を変えるケースも増えていくでしょう。

 

3. 3Dプリントに関連する法律や規制の枠組み作りが始まっている

3Dプリントのように大きな可能性を持った技術が社会に浸透していくにつれ、法律や規制の枠組みもその変化に対応していく必要があります。特に病院などリスクの高い場所では患者の安全を守るため、3Dプリントを使用する際には規制当局の承認が必要。また健康保険の仕組みも考慮にいれることで、3Dプリントを誰にでも手に届く技術にしていく努力が求められています。マテリアライズ・ワールド・サミットにスピーカーとして参加いただいた方の中には、こうしたトピックに詳しい法律専門家やEU(欧州連合)関係者も。

規制をクリアして厳しい安全水準を保つ必要があるのはヘルスケア領域だけでなく、航空宇宙や自動車製造などの工業分野でも同様です。3Dプリント技術が成熟していくにつれ、3Dプリントに関する法律や規制事項の制定も加速していくはず。各市場におけるこうしたルールの変更や追加を明確に把握しておくことも、3Dプリント事業を成功させる鍵のひとつです。

 

病院内3Dプリントに小型の卓上3Dプリンターが使われる日も近い

小型の卓上3Dプリンターを用いた「病院内3Dプリントラボ」を表現した展示。3Dプリントが広く浸透すれば、ルール作りもそれだけ重要になります。

 

4. 「共創」のトレンドがこれからも3Dプリントの可能性を広げ続ける

3Dプリントの強みは、なんといってもその用途が無限大にあること。サミット内でも3Dスキャンで作るカスタマイズ眼鏡から航空機エンジン、スキーブーツ、車椅子やインプラントまで様々な3Dプリントを応用したケースについての展示・講演が行われました。

3Dプリントの無限の可能性を享受できるのは、マテリアライズのような3Dプリント專門企業だけではありません。現在他業種のエキスパートとのコラボレーションを通じ、互いの強みを活かした3Dプリント製品・サービス開発を行う動きが活発になってきています。マテリアライズも「共創(コ・クリエイション)」サービスを通じて「新しく3Dプリントを使って何か始めたい」「3Dプリントでしかできない価値を生みたい」と願う多くの企業とコラボレーションしています。

HOYAとマテリアライズの技術を融合して生まれたカスタマイズ眼鏡の3Dプリントサービス「Yuniku」や、3Dプリントを医療の現場でもっと使いやすくするため、病院と規制当局・大学と連携したルール作りを行う動きなど、既にさまざまなコラボレーションが形になっています。「共創」がますます活発になれば、今まで私たちが想像しなかった3Dプリントの新たな用途がこれからも引き続き開発されていくでしょう。このサミットをきっかけに、参加者の皆様の間で新たなコラボレーションの種が生まれているかもしれません。
 

世界各国から3Dプリントのプロたちが集まったサミット


マテリアライズ・ワールド・サミットにお越しいただいた皆様、ありがとうございました。ご参加いただけなかった方も、ハイライトをまとめたビデオでイベントの雰囲気を味わってみては?さらにサミットで行われた講演の大部分はビデオでご覧いただくことも可能です。