yui 5月 29, 2017
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3Dプリンタ製腎臓モデルを用いた研究の結果

生体データに基づいて3Dプリントされた腎臓模型の使用が、手術計画においてどのようなメリットを生み出すのか。その詳しい調査に踏み出したのは、ニューヨーク大学医学部、ニコール・ウェイク医師率いる3人の泌尿器科医でした。

調査の対象として選定されたのは「R.E.N.A.L. Nephrometry Scoring System(RNS)」評価でランク5以上と判断された症例10パターン。RNSは、患者の抱える腫瘍の複雑さと、腫瘍除去の難易度を計るスコアです。

調査は3Dプリントした臓器モデルを使用しない場合と使用する場合、それぞれの手術方針と外科医らの意思決定のプロセスの比較に基づき行われました。

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まずは選定された症例について、スキャン画像のみを頼りに外科医が治療計画を策定します。次に同じ医師が生体データに基づいて3Dプリントされた腎臓模型を手に取りながら、新たな手法を検討。最後に3Dプリント模型を用いない場合と用いる場合に決定された二つの異なる治療計画について、調査に参加した外科医らがアンケートに記入しました。

結果、どの症例でも3Dプリント臓器モデルを使用する場合と使用しない場合で術前計画に変化があったことが明らかに。中には治療方針が大きく変化したケースも報告されました。
 

3D-printed kidney. Image courtesy of Dr. Nicole Wake

3Dプリントされた腎臓モデル。 Image courtesy of Dr. Nicole Wake

3Dプリント臓器モデルが治療方針の見直しに影響

3Dプリントの模型の導入前後では、次のような治療方針の変化が見られました。

  • 3つの症例において、腎臓の大規模摘出を提案した外科医らが一部摘出に治療方針を修正
  • 1つの症例において、2名の外科医が開腹手術の代わりに切開を最小限に抑えた腹腔鏡手術を行う方が好ましいと判断
  • 全症例の30%において、3名の泌尿器科医が経腹膜や後腹膜に対する施術内容を変更
  • 1名の外科医が50%の症例において、その他2名の外科医が40%の症例においてクランプを用いる方針を変更
     

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静脈構造を含む健康な組織や腫瘍を実寸大で再現した3D臓器モデルを手に取ることができれば、担当医はあらゆる側面から症例や治療方法を検討でき、それが結果的に患者への負担が小さい治療方針を選ぶことにもつながるのです。

3Dプリンタ製腎臓モデル

3D臓器モデルの泌尿器科領域への貢献

泌尿器科医の間で「最小限の切除に抑え、腎臓の機能を維持する」という考えが一般的となった現在、大規模な腎摘出を行うケースは減ってきています。こうした方針を貫くには臓器や腫瘍をわかりやすく視覚化し、各患者の状態や生体構造を深く理解することが欠かせません。

同時に生体構造の明確な視覚化は、3Dプリントの最大の利点のひとつでもあります。静脈構造を含む健康な組織や腫瘍を実寸大で再現した3D臓器モデルを手に取ることができれば、担当医はあらゆる側面から症例や治療方法を検討でき、それが結果的に患者への負担が小さい治療方針を選ぶことにもつながるのです。

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今回のニューヨーク大学による調査では、柔組織の特徴を忠実に表現するためMRIスキャンが利用されました。研究チームは得られたスキャンデータをもとに、腫瘍、腎皮質、髄質、腎臓の血管系、尿管の各部位を「Materialise Mimics」ソフトウェアを用いて抽出・セグメンテーションし、3D化。完成した3Dモデルはマテリアライズが独自開発した半透明の素材を用いて3Dプリントされました。このような手順を踏んだからこそ、腎臓の組織、脈管系といった各部位と腫瘍との位置関係が明確になりました。

泌尿器科領域だけに留まらず、医療現場における3Dプリントの活用事例は目覚しい進化を遂げています。病院での3Dプリント導入をお考えの方は、お気軽にご相談ください。生体データをもとにした3Dプリント用データの作成方法を習得したいとお考えの方のため、無料セミナーも開催しています。またオンラインセミナー*や以前のブログ記事でも医用3Dプリントの導入方法や院内3Dプリントラボの設立方法について詳しく解説しています。

※上記オンラインセミナーは医療機関にお勤めの医療従事者を対象として提供しております。国外の医療従事者また一般の方に対する情報提供を目的としたものではありませんので予めご了承ください。